何が起きた・決まったのか

新潟大学は「創造的活動時間創出プロジェクト」を開始した。大学がいう創造時間とは、研究だけを指すものではない。教育、人材育成、地域共創、大学運営など、教職員が専門性や能力を発揮する活動に使う時間を含む。

プロジェクトを担当するタスクフォースは「TCタスク」と呼ばれている。今回開設されたTC-Postでは、会議、手続き、情報共有、業務分担などについて、困りごと、改善案、時間創出につながった好事例を匿名で投稿できる。第1回の募集締切は2026年9月30日である。

重要なのは、投稿フォームの開設自体ではなく、大学が時間不足を「個人の努力の問題ではなく、業務や組織の構造に関わる課題」と明記した点だ。

背景と社会的な意味

新潟大学は、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業「J-PEAKS」の採択大学である。J-PEAKSは、研究活動の国際展開や社会実装を進めるため、研究大学の経営戦略と環境整備を支援する制度だ。

新潟大学は10年後のビジョンとして、「脳といのち」「食と健康」を重点研究領域に掲げている。同時に、高度専門人材と事務職が連動し、教学と経営を分離しながら協働する職場づくりも目標にしている。新潟大学の事業概要には、学長直轄の研究力強化推進本部と統合IRを活用して、研究資源や人材資源を配分する方針も示されている。

研究拠点を設けても、教職員が会議、重複入力、複雑な決裁、問い合わせ対応に追われれば、研究や教育に使える時間は増えない。今回のプロジェクトは、研究力強化を新しい施設や研究費だけでなく、日々の仕事の設計から捉え直す試みといえる。

反対面、限界、まだ分からないこと

現時点の公式発表だけでは、年間60万時間の算定根拠は分からない。対象となる教職員数、1人当たりの想定時間、現在の業務時間、基準年度も示されていない。

また、匿名投稿には、立場を気にせず課題を挙げられる利点がある一方、背景事情の確認や改善案の具体化が難しい場合がある。投稿件数が多いことと、重要な課題を特定できることも同じではない。

「創造時間」の範囲が広い点にも注意が必要だ。研究、教育、地域共創、大学運営をすべて含める場合、何をもって創造時間が増えたと判断するのか、共通の測定方法をつくるのは簡単ではない。

編集部の確認ポイント

  • 年間60万時間の基準年度、算定式、対象人数
  • 「創造時間」の測定方法
  • TCタスクの権限、構成員、意思決定経路
  • 投稿後の選定基準、実施期限、結果公表の有無
  • 創出時間から新たな作業時間を差し引くか
  • 部局・職種別の負担移転を検証するか
  • 教育、学生支援、研究倫理など守るべき業務の基準